こどもの病気
嘔吐・下痢の対処法
嘔吐・下痢はなぜいけないのでしょう?
子供は大人に比べると、非常によく吐き、下痢をします。そして、数回嘔吐や下痢を繰り返すと、簡単に脱水症になってしまいます。
 それは、子供は大人に比べて体が必要とする水分量が非常に多く、体が小さい分、蓄えが少ないために簡単に不足状態に陥ってしまうのです。

脱水症を防ぐにはどうしたらいいのでしょう?
 脱水症にならないようにするためには、嘔吐を止め、水分を補給しなくてはなりません。
 しかし下痢は、初期の段階で強力に止める薬を使うのはあまり好ましくないと私は考えます。おなかの中にまだ下痢の原因である細菌やウイルスがたくさんいる状態で下痢を止めてしまうと、おなかの中で細菌やウイルスがどんどん増加し、余計に悪化することがあるからです。
 水分補給の大切さは皆さん分かっていらっしゃると思いますが、やり方によっては余計に脱水症状を進行させてしまう場合があります。おなかの状態を考えずにどんどん飲ませるのは逆効果です。

吐いている時はどんな状態なのでしょう?
 吐いている時は、胃腸の動きがめちゃくちゃになってしまっています。胃に物を受け付けなくなっているから吐き出しているのです。食べ物も水分も同じです。
 そんな状態では水分補給など不可能です。飲んでも、結局吐き出してしまいます。吐く時に、飲んだ分だけ吐き出すのならまだいいのですが、胃液なども一緒に吐いてしまうため、体の中にあった水分や塩分など、必要な物までどんどん吐いてしまい、水分以外の物まで不足してきてしまうのです。

吐いたらどうすればいいのでしょう?
 吐いた時は、しばらく(1時間ぐらい)は胃腸の動きが落ち着くまで、何も飲食させずにおなかを休ませましょう。
 吐いた後は、口の中が気持ち悪かったり、のどが渇いたりするため、子供はよく水分を欲しがります。しかし、そこで飲ませてはいけません。上にも書いたように、飲んで吐いて、飲んで吐いてを繰り返して脱水をひどくさせる悪循環になってしまうからです。
 どんなに欲しがっても、おもちゃなどで気を紛らせてあげて下さい。
 どうしても我慢できない場合は、小さな氷のかけらやアメ、ラムネなどを少しだけ与えてみましょう。小さなお子様は、のどに詰まってしまう事がありますので、避けて下さい。

吐き気がおさまったら
 1時間ぐらいたって胃腸の動きが落ち着いてくると、吐き気がおさまってきます。そうしたら、少しずつ水分を与えていきましょう。子供用のイオン飲料やお茶、湯冷まし、薄めたリンゴジュースなどがいいでしょう。
 初めは10〜20ml程度(大さじ1杯前後)を飲ませてみます。そして20〜30分、吐き気が再び現れないかどうか様子を見ます。大丈夫なら、20〜30ml飲ませて、20〜30分様子を見ます。大丈夫なら、同じように様子を見ながらだんだんと量を増やしていきましょう。
 また吐き気が現れれば、まだ胃腸の動きがめちゃくちゃで受け付けない状態ですので、また1時間ほど、何も与えず(我慢できなければ氷やアメなどを少量だけで)に様子を見ましょう。そしてまた、少量の水分を与えていきましょう。

水分が摂れるようになったら
 水分がしっかり摂れるようになったら、食べ物を少しずつ与えてみましょう。
 柔らかいおかゆや、リンゴのすり下ろしなどが、おなかへの負担が軽くていいでしょう。初めはどろどろの、形のない物を与えます。
 どろどろの物が食べられるようなら、柔らかい、少し形のある物を与えてみましょう。柔らかく煮込んだうどんや、ゼリー(こんにゃくゼリーはだめですよ)、お豆腐などもいいでしょう。
 少しずつ固い物にしていき、徐々に消化のよい、普通の食べ物に近づけていきましょう。

吐き気止めはいつ使う?
 家に吐き気止めがあれば、使う事ができます。使ってあげるといいでしょう。
 1〜2回吐いて、後はスッキリしているようなら使う必要はありません。しかし、何回も吐いたり、吐かなくてもムカムカと気分が悪そうな様子だったり、えづいていたりするようなら、無理に我慢させず、使ってあげましょう。
 吐き気止めは、飲み薬と坐薬があります。どちらでもかまいませんし、効き目は同じなのですが、坐薬の方が早く効きます。また、吐いている時に飲み薬を飲んでも、効果が現れるまでに吐き出してしまう事も多いため、坐薬をお勧めします。でも、下痢も激しい場合は坐薬が出てきてしまうので、その時のお子様の症状をみて、飲み薬と坐薬の両方があるなら、どちらが成功しやすそうか見て使ってあげて下さい。
 吐き気止めの飲み薬や坐薬は、両方を一度に使わないで下さい。1回使ったら、8時間は間をあけるようにして下さい。
 痙攣止めや熱冷ましと一緒に使う事はできます。どれも坐薬の場合は、どれが先でもかまいませんの(痙攣止めの時間は最優先させ下さい)で、できれば30分ほど間をあけて使うといいでしょう。一度に使っても体に悪いわけではありませんが、混ざると吸収に時間がかかるようになるため、なかなか効き目が出てきません。

それでも脱水になったら?
 おなかを休めたり、坐薬を使ったりしても、よくならない場合はもちろんあります。症状が強い場合は、家庭での対処だけではおさまりません。
 そうなれば、点滴が必要になります。口から水分が摂れないのですから、血管に直接水分を届けてあげるのです。胃腸にも負担をかけず、吐き出す事もありません。クリニックでの外来での点滴だけではおさまらないほどひどい場合は、入院する必要があります。その時は病院を紹介致します。
 おしっこの回数や量が減り、ぐったりしてきたら薬が有っても受診して下さい。点滴が必要かどうか、診断します。
 『脱水にならないように、前もって早めに点滴をすればいいのではないか?』と思われるかも知れませんね。でも、脱水になる前に点滴をする事は、痛いだけであまり意味のない事なのです。脱水になる前に点滴をして水分を入れると、大半がおしっこになって出て行ってしまうだけなのです。
 スポンジを思い浮かべてみて下さい。水分がまだしっかり含まれているスポンジに水をかけると、余分な水は流れ出してしまいますね。乾いたスポンジに水をかけたら吸い込んで水を含みますね。脱水になる前に点滴をするという事は、水を含んでいるスポンジに水をかけるのと同じような事なのです。

受診のタイミングは?
 嘔吐や下痢の原因はたくさん有ります。やはり、症状が有れば受診し、治療を開始する必要があります。
 しかし、困るのは夜や休日に症状が出始めた場合です。1〜2回吐いたり下痢したりした程度なら、少し様子を見ましょう。手持ちの薬を使ったり、おなかを休めたりして落ち着くようなら、あわてて救急病院を探して受診する必要のない事が多いです。症状が軽ければ翌日まで待ってもかまいません。
 しかし、頭をとても痛がったり、血便がでたり、転げ回るほどおなかを痛がったり、ぐったりした状態が続いたり、といった場合は、夜間や休日の応急診療所を受診しましょう(新聞の地域欄に当番の病院がよく載っています)。

COPYRIGHT(C) aoitori ALL RIGHTS RESERVED.